情報に関する教育においても、従来のような技術者としての専門教育だけでなく、情報を自らの目的に即して的確に判断し、処理し、伝達できる総合的な能力の育成(情報教育)が求められています。既に文部省による先見的な認識に基づく多大な努力がなされてきましたが、情報教育を真に実効あるものとするには、その内容、方法、評価においても、従来の教科の枠を越えた新しい枠組みのカリキュラムの実施が不可欠であります。
欧米諸国はもとより、シンガポール、マレーシア、韓国などのアジア諸国でも情報教育カリキュラムの整備とそれを支えるインフラの充実が行われており、今、日本でも早急に体系的な情報教育を実施するための環境整備が必要であると認識し、研究・実践を蓄積しているものであります。特に日本の情報教育の現状を評価すると、今後、小・中・高の学校に独立した教科目として情報教育を位置づける必要があります。そのためにも小・中・高一貫した、整合性のあるカリキュラムの整備とその制度的実施の枠組みを確立する必要があります。そこで以下のような要望をする次第であります。
(1)小学校段階では、「表現・コミュニケーション」に関する総合教科目を設置し、コンピュータ、マルチディア、広域ネットワーク(インターネットなど)を活用した表現と伝達、創造的活動や調べ学習に基づく実社会との触れ合い、共同学習などを実施する。
(2)中学校段階では、現在の情報基礎をさらに発展させ、情報に関する基礎的概念を教育すると共に、未来指向の総合科目としての「課題研究」2単位程度を設置し、既存の教科の内容に対して、さらに興味・関心を追究した課題解決学習を明確に取り入れる。内容としては環境問題、国際理解、情報と社会や、福祉・社会活動への参加などを含め、課題の発見・設定、課題の追究・解決、作文・レポートの作成やプレゼンテーションによる発表を中心とし、教科の発展的知識を総合的に修得するとともに、情報活用能力の育成を図る。
(3)高等学校段階では、先の学習指導要領の改訂によって「情報」を教科として設置することが可能になっているが、現実には実施されているところはわずかであり、特に普通科の進学校では、情報に関する内容を積極的に省略する傾向がみられる。これは大学入試科目との関連の希薄さに起因するため、高等教育への接統性を十分に考慮する必要がある。また、情報化社会に対応できる国民的素養を体系的に学習するため、高等学校の全生徒に必修2単位を含めた「情報」に関する新教科目を設置する。ここでは基本的事項の理解とともに創造的活動、プロジェクト的共同作業を重視する。
(1)学校での情報活用を支援するために、コンピュータ・コーディネータ、ティーチング・アシスタント制を充実させる。
(2)教員の情報リテラシーの育成(授業の工夫や児童・生徒に対する観察力・指導力、責任感の向上)を図るために、教員免許のあり方(教員免許の更新制度と研修制度)、教員養成制度、教員採用試験、管理職試験等を見直し、体系的に整備する。生涯学習体制として、また学校文化を重視した現職教育を発展させるために、遠隔教育が実施できる情報環境及び制度の整備が早急に必要である。
(3)教員養成大学・学部のスタッフデベロップメントと情報教育関連学科を新設する。
(4)文部省の中に、専任の教科調査官、視学官を位置づける。
(1)学校の情報資源としては、誰もがネットワークにアクセスできる環境、図書室の電子化、マルチメディア教材作成・印刷設備、マルチメディア・プレゼンテーション教室を準備する。
(2)地域社会、家庭などでの情報化と、学校教育との連携を可能にするため、地域にネットワーク・スクール(公的カリキュラムを有した家庭での学習を支援するバーチャル・スクール)を新設し、オープンな利用を制度化する。
(3)全国的なレベルでの教育情報の流通、学習支援、マルチメディアやネットワークを活用した教員研修などを研究開発、支援するため、国立の教育情報ネットワーク基盤センターを新設する。
(4)教育に役立つ情報資源として、公的資金で収集した調査データ、実践データ、行政情報、研究成果の電子的な手段による公開を促進する。