(事例2)学習課題:コンピュータ通信を利用した異文化理解
パソコン通信は、手紙や電話に変わるものとして普及しつつある。パソコン通信が時間や空間を超えたコミュニケーション手段であること、双方向の通信であること等、パソコン通信の特徴や仕組みについて学習することは、情報化時代に生きる生徒たちにとっては必要である。さらにそれを生活の場で意欲的に活用していこうとする態度は現代人として重要なことであろう。また、国際化時代と言われる今日、積極的に異文化との交流を図り、国際人としての資質を育成することは大切であると考えられる。このような立場から、アメリカの子どもたちとの家庭料理の情報交換にパソコン通信を活用した取り組みを行なう。
◆学習目標
(1)コンピュータ通信により、異なった地域(国)の生徒達と共通の問題を討論する。
(2)電子メールの作成、送信を体験する。
(3)特定のテーマ(本例では、「食物と栄養」)をもとに、協同調査や分担実験を企画し、遠隔地にいる生徒たち同士で、おたがいの社会的背景の違いや、問題点を認識する。
(4)コミュニケーションの道具としてコンピュータ通信の特性を理解し、活用できる態度を養う。
【関連する学力項目】
A 知識理解(含む概念把握)
メディアによるコミュニケーションの方法
コンピュータネットワークの概念
B 技能習得・表現力
B-06 知的生産のための諸技法(ブレーンストーミング法・KJ法など)
B-07 調査のための基本技術
B-11 特定のハードウエアの基本操作
B-12 文書作成・DTPR技術
B-13 ファイルの保存・検索・印刷の技術
B-17 情報検索技術
B-18 ネットワーク利用技術
B-20 アンケート調査の方法・手順
B-22 論文・報告書の記述
C 思考力・判断力の育成
C-01 計画を立てて取り組む
C-02 情報を幅広く収集する
C-03 情報を比較・整理する
C-04 共通点をとらえる
C-12 事実調査に基づいてデータを作る
C-15 情報の価値を判断する
C-16 社会的な側面からの情報技術の評価
D 関心・意欲・態度・習慣の形成
D-01 判断する前に実態を正確に把握する
D-02 適切なコミュニケーションの方法を選択する
D-03 問題意識を明確にする
D-04 自由に意見を交換する
D-05 自分の意見をメディアを利用して、適切に伝える
D-12 データに基づいて科学的に分析・解釈する態度をもつ
D-18 自分の発信した情報の影響を、客観的に評価し、必要な改善を行う
D-19 必要な情報を自分で管理する
◆学習目標
テーマ:「食物と栄養」
(1)その地域(国)の特徴的な家庭料理の名前や由来を調べる。
・その料理の材料や分量を調べる。
・その料理に関する習慣やしきたりについて調べる。
・調べた内容をグループで話し合い、情報交換するデータとしてまとめる。
(2)電子メールをにより、NETWORKの共同学習者に、調べたことを紹介する。
・それらのメールをグループで手分けして、相手地域の言語に翻訳する。
・写真やイラストを転送する方法について考える。
・それらのメールについて報告しあい、話し合う。
(3)昼食(弁当)を対象として、栄養計算をする。
・脂肪・蛋白・糖分の検査
・測定したデータを、表計算ソフトでまとめる
・栄養の基準表や理想的な栄養量と、測定データの結果を比較して、討論する。
・測定結果や話し合った結果を、電子メールで交換する。
(4)総合比較・討論
・他の地域(国)から送られてきた、情報と自分たちの集めた情報について、比較する。
・わからないことやもっと知りたいことを、電子メールで、問い合わせる。
・これまでの経験でわかったことをまとめる。
◆評価の視点
・自国の特徴的な家庭料理をについての内容とその英訳のレポート
・実験データや栄養計算のデータ等の取り扱い
・外国の人達とのコミュニケーションによって、日本と異なっていた点や日本を見直した点、またそれらの社会的背景についてどのように考えたかについてのまとめのレポート
・コンピュータ通信を積極的に活用する態度が見られたか
◆学習環境/ソフトウエアなど
・通信ネットワークソフト
パソコン通信の場合は、NIFTYなどへの、電話線(だだし、ソフトを工夫することにより、ファイル送信は、電話のあるところから一括しておくることができるので、パソコンまで、電話が引かれていなくてもよい。
・作業シート
テーマに特化された、学習ノート(話し合いの結果や、観測結果を記入する)
◆実践結果
高知県の高等学校家政科において、高校3年生を対象に実施した。授業は14時間の計画であった。計画1時間、調査レポートの作成・英訳に2時間、実験2時間、栄養計算2時間、通信の送受信に5時間(基本操作演習を含む)、報告と話し合いに2時間。計14時間であった。結果は、つぎの通りである。
(1)アメリカの子どもたちとコミュニケーションして、どういった点で日本と異なっているかについては、食材の違いや食生活の偏りを感じた生徒、また宗教的な行事に関する料理が多くあることや宗教的な理由から食材が限られることに日本との違いを感じた生徒が多くいた。
(2)日本の食事について見直した点については、豊富な食材や栄養的にバランスがとれた食生活であること、健康的な食事内容であることを多くの生徒が改めて認識したようであった。
(3)アメリカの子どもたちにメールを送る際には、相手に理解できる内容であることや、共通した食材であること、そのためにどのような英訳をすればよいか、その困難さを痛感した生徒が多くいた。
(4)他の国の子どもたちとのコミュニケーションは、相手が年下ではあったが、非常に楽しく、よい機会であったと述べた生徒が多く、貴重な体験となったことが感じられた。
(5)コンピュータを会した通信は初めてであり、生徒にとっては興味を高めたが、通信の回数が限られていたために、パソコン通信の特徴を理解するまでには至らなかったようである。
◆授業の展開

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