V.具体的な授業案の提案と試行
(事例1)学習課題:カード社会における生活のシミュレーション
家計管理の立場から短期の生活設計を考える。実生活では、給料の銀行振込みや公共料金等の銀行引落しが一般化される傾向にあり、そのために家計管理は非常に複雑化している。さらに、クレジットカードを使用した商品の購入が増加し、ますます家計管理の重要性が問われている。このような現状を把握するとともに、家計管理の必要性を認識させ、計画的な生活を実践させることは大切である。また、商品購入をする際の意思決定や、クレジットを利用するときに必要な知識・態度を体験的に学習させることは重要である。
◆学習目標
(1)カード社会、キャッシュレス時代がもたらした変化について理解する。
(2)クレジットカードの仕組みや利用する際に必要な知識について学習する。
(3)健全な商品購入や消費ができるような実践力を養う。
(4)家計の長期化・金融化に伴う問題点について考える。
(5)家計管理の必要性について学習する。
【関連する学力項目】
A 知識理解(含む概念把握)
情報化社会の中での生活知識
B 技能習得・表現力
B-02 問題発見のための情報技術の利用
B-08 企画立案の技術
C 思考力・判断力の育成
C-01 計画を立てて取り組む
C-02 情報を幅広く収集する
C-08 利点と欠点を考えて検討する
C-16 社会的な側面からの情報技術の評価
D 関心・意欲・態度・習慣の形成
D-11 新しい情報関連機器を積極的に理解し、特性にあった利用方法を習得する
D-20 情報化社会に対応した日常生活の態度をみにつける
D-21 情報化社会の進展に関心をもち、社会や職業の変化を的確にとらえる
◆学習目標
・カード社会やキャッシュレス時代がもたらした家計の変化について話し合う。
・銀行口座の給料振込や公共料金の引落について実態を調べる。
・生活シミュレーションゲームソフトを用いて1年間の単身生活をシミュレートする。
・体験をもとに、クレジット返済の妥当な金額や割合の具体的な数値について話し合う。
・生活シミュレーションゲームソフトへ再度取り組む。
・シミュレーションゲームでの結果を報告し合い、互いに評価し合う。
・家計を管理するために必要なデータや家計簿の役目について話し合う。
◆評価の視点
・生活シミュレーションゲームソフトを用いて1年間の単身生活をシミュレートの体験
幾度、試みたか、商品の購入リストと貯金額を基に計画的な購入がなされたか、
クレジット返済額が家計を圧迫しなかったか、各自の価値観や生活目標に合った経済生活であったか
・限られた枠の中で、各自のライフスタイルに応じた生活をデザインするために、
どのような手段や計画を立てていかなければならないかについてのレポート。
◆学習環境/ソフトウエアなど
2人に1台のパソコン
生活シミュレーションソフト「K子のひとりだち」(鳴門教育大学 学校教育研究センター開発)
◆実践結果
高知県の高等学校家政科において、高校1年生を対象に実施した。授業計画は5時間分であったが、実際には、計画・調査に2時間、シミュレーションに3時間(基本操作演習を含む)、自己評価と話し合いに2時間。計7時間であった。結果は、つぎの通りである。
(1)生活シミュレーションゲームソフトの試行回数は、2時間の授業の中で、1回が14%、2回が50%、3回が36%で平均2.2回であった。
(2)ゲーム後の問題意識については、独立する際の準備金の必要性を感じた生徒が56%、毎月の生活費の内容と各経費の把握が大切であることを認識した生徒が40%であった。
3)支払い方法の利点・欠点に対する回答率は下表のような結果となった。
| 利点 | 欠点 |
| 現金払い | 70% | 67% |
| 翌月一括払い | 19% | 26% |
| ボーナス一括払い | 41% | 33% |
| 分割払い | 52% | 48% |
(4)カード社会において、一人暮らしに対するの感想としては、一人暮らしの難しさを実感した生徒が67%、生活の基盤としての経済面の重要性を理解できたと述べた生徒が22%、一人暮らしへの興味や意欲が湧いたたという生徒が11%であった。
(5)本演習に対する感想としては、楽しい・おもしろかった(61%)、生活を実感できた(21%)、将来の生活のために役立つ(18%)、将来の生活への展望がひらけた(15%)等があげられた。
◆授業の展開

[2-2メニューへ]
[次の項目へ]