カリキュラムの具体的な実施のために
作業を進めるに当たって、本グループでは、システム的な見方を土台にし、システムの外部表現であるIPOC(Input- Process-Output-Circumstances )の4つの視点を用いて、高等学校での「文系情報」の科目設計について、具体的に考えてみた。
IPOC(Input- Process-Output-Circumstances )では、下図のように、中央にProcessとしての学習過程がある。このプロセスの全体像を設計することが、カリキュラム開発と見ることもできよう。

IPOCに基づいた科目設計の考え方から、まず、高等学校の学習者の状態、すなわち、入力、出力について、仮定を設定することにする。
【 入力の仮定】
以下、主語は未学習者で、記述内容はそのイメージである。
○情報を学ぶという意欲を持っている。
○中学校で「情報基礎」を学んで来ている。
○中学校の「情報基礎」を一応理解している。
○文系の大学への進学の希望を持っている。
○情報の学習の動機づけができている。
○情報を学ぶことに意義や価値を感じている。
○いま、自分は情報化社会に生きているということを体感している。
【 出力の仮定】
以下、主語は既学習者で、記述内容はそのイメージである。
○文系の情報を理解している。
○情報リテラシーを身につけている。
○情報知識を持っている。
○情報概念を把握している。
○情報技術を習得している。
○情報を活用した問題解決能力を身につけている。
○情報生活習慣を身につけている。
○情報態度を形成している。
○大学へ進学して、さらに情報について学びたいと思っている。
○学んだことを実際に活用するという態度を持っている。
さらにこのシステムを機能させるための、Circumstances(環境)を整理すると次のようになる。
【 環境についての仮定】
社会的環境
○情報という教科教育のカテゴリーが認知されている。
○高校で広く科目選択制度が認可されている。
○大学入試に情報という科目が設定されている。
○主要な大学が入試科目に情報を入れている。
○情報担当の教育免許が認められている。
○社会一般に、情報という科目を高等学校段階で学ばせることに意義を認めて
いる。
○情報担当教員の養成の組織ができている。
○情報教育が国民すべてに必要であると理解されている。
学校での環境
○学校内に情報の機器が整備されている。
○情報を担当できる教員が確保できている。
○情報機器としてのハードウェアが整っている。
○情報教育用のソフトウェアが整っている。
○情報の教科書ができている。
○情報の指導書ができている。
○課題研究の実施情報を蓄積する体制ができている。
○情報という科目を選択できる履修システムになっている。
○校内に情報という科目が認知されている。
○校内LANができている。
○校務分掌として情報の委員会ができていて、委員がいる。
○情報教育について校長をはじめとして、一般教員にも理解されている。
○情報教育がこれから国民全部に必要であるということが理解されている。
本研究では、これらの環境条件が整っていることを前提に、カリキュラムの構成をおこなった。しかし、現実には、環境の多くは未整備であり、カリキュラムの実施のためには、単に、学習内容の整理だけでなく、学習環境の整備や、社会的認識の変化、制度の変革などとの関連をにらみあわせながら、進めていくことが重要であることが示唆される。
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