III.IV. 章だての提案、学習課題と学力項目のリストアップ
以上のような検討に基づいて,つぎのような7章に,学習の内容を整理した。
第1章 情報とシステム
第2章 情報化と社会
第3章 生活とコミニュケーション
第4章 人間の情報処理
第5章 情報化をささえる技術
第6章 情報化社会と今後
第7章 システム的な見方、考え方
注意)本グループでは,理科系のグループと内容を調整する段階で,両者をあわせ,共通の教科書として,次のような5章により構成される情報IBの内容が検討された。
第1章 情報科学の基礎(理系・文系共通)
第2章 情報モデル(理系・文系別)
第3章 情報と社会(理系・文系共通)
第4章 アルゴリズムと問題解決(理系・文系別)
第5章 情報の操作と長期課題研究(理系・文系別)
しかし、アンケート調査の分析や、内容検討の段階で、7章による独立のカリキュラム案として、検討することになった。
1.はじめに
情報IBの目標を、総合的に達成するためには、座学として、知識を教え込む従来の方法では、困難であると考えている。
したがって、情報IB(文系)の実施においては、これまでの高校教育の常識を捨て、新しいタイプの授業の展開をぜひ試みてほしいと願っている。必要な新しい観点は、つぎの通りである。
課題解決型の学習と課題解決の道具としてコンピュータの活用
たとえば、最近、高等学校の職業課程の専門学科で採用されている「課題研究」のように、テーマを設定し、情報機器の活用を駆使して、課題解決を行ない、報告書を作成するような、教育方法と評価方法を採用することが考えられる。
この場合、
(1)自分の興味のある分野において、一つの目標を設定し、その目標の実現に向けて情報を集め、整理し、情報を自分の目的に合致したものにまとめて、メディアを用いて発表する。
(2)情報に関して、関心のあるテーマを設定し、事実調査を行い、得られた知見を報告書にまとめる。さらに発表会でメディアを用いて公表する。
ことを義務づける。
このとき、データを統計的に処理したり、グラフ表示したり、論文らしきものをワープロで入力して、レポートを提出するということを義務づけ、コンピュータを自由に使える環境を与えるとよい。これらの技術習得のために、ワープロの使い方や表計算の利用方法を教師が1から指導する必要はない。手とり足とり指導していくよりも、見よう見まねで利用できるようになるものである。これまでの優良レポートの例やコンピュータの活用の方法をデモして示せば、生徒の中で教えあいながら、具体的な課題を解決しようとする行動の中で、修得される。
このことにより、具体的な学習活動の中で、 (2) ワープロや表計算などのソフトを利用して問題解決ができる (6) メディアやコミュニケーションの道具を使いこなせる 能力が身に付くことが可能になる。
教育の方法としてのマルチメディアの活用
情報に関する技術や態度を養うための新しい科目であるので、実施においても、新しいメディアを積極的に利用し、メディアの有効な利用方法を模索する必要がある。
たとえば、「情報IB」の内容の中にも、いわゆる覚えなければならない知識や用語が数多くある。
しかし、これらの内容を日本史や世界史の内容や、人名や年号を覚えるようにやみくもに記憶させたり、知識テストによって評価・評定に利用するということでは、この単元の設定された意味がない。特に、第3章「コンピュータと暮らし」の単元などで扱われている内容は、時代とともにどんどん変化していくので、教科書の内容も固定しにくく、時代とともに学習内容が変化することが前提になる。
知識の定着に対しては、教師が教えるのではなく、学習課題として、生徒に調べさせ、探索させることも、一つの方法である。「コンピュータはどのような仕組みで動いているのか」「コンピュータの中では情報はどのように表現されているのか」「コンピュータができる前とコンピュータの普及後では情報処理の仕組みはどう変わったか」「今、コンピュータ技術で最も新しい話題は何か」「新しい技術で、人間の価値はどのように変化していくか」、学習課題は書き出せばきりがない。実施の頃には、CD-ROMなどのマルチメディアの教材ソフトで内容の充実したものも多く出回ることになる。例えば、「How Computes work」というマルチメディア型の教材は、先の質問に対して、イラストやアニメーションを駆使して、いろいろな内容をコンピュータ画面上で説明してくれる、きわめて完成度の高い電子百科事典教材である。このようなマルチメディア型の教材を1つ手に入れ、課題意識をもって、探索的に学習していくだけで、情報IBで扱われている知識の半分以上の習得が可能であろう。教師はどんな学習課題と情報環境を設定すれば学習者が自主的に勉強するかよいのかを考え、その場面を作り出すことが重要な力量になる。
以上のような観点に立って、ここでは、次の手順で、作業をすすめることにした。
(1)各章で、利用できる、学習課題を具体的にリストアップする。
(2)各課題で期待される学習活動をもとに、情報IB(文系)における学力項目を、再度、整理する。
(3)(1)の一部を、高校現場などで試行する。
ただし、これらの作業は、本検討グループの数名による作業の一部であり、カリキュラム全体の整合性や、バランスを検討したものではない。
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2.各章別の学習課題
ここでは,学習項目と学習課題のアイデアの一例を示す。具体的な内容についてはまだ十分な検討ができていないので,キーワードをあげるにとどめた。なお○印は,その中でも特にこの章で重点的に取り上げるべきものを示している。
リストアップされた学習課題は、順にこなしていくためのものではなく、あくまでも一例であり、これらの中から、興味のあるものを選択することを前提としている。また、課題の演習時間については、宿題や1時間程度でできるものから、一月以上必要とするもの、個人で行えるもの、グループによるものなど様々であるが、これらについては、具体的に実践試行を通して、実用上の評価をして改善していくことが、必要となろう。
第1章 情報とシステム
第2章 情報化と社会
第3章 生活とコミュニケーション
第4章 人間の情報処理
第5章 情報化をささえる技術
第6章 情報化社会と今後の問題点
第7章 システム的な考え方
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3.抽出された学力項目
各実施校において、カリキュラムとして課題解決学習に取り組むためには、上記のような、課題を演習することによって、どのような学力をのばすことになるかを、明らかにする必要がある。とくに、演習を等して習得する技術や思考力、表現力や態度などと、課題との対応を明確にすることが求められる。そこで、これらの対応表を作成する準備のため、課題から抽出される学力のうち、知識理解(A)以外の項目をリストアップし整理した。この、作業についても、まだ、検討中であり、今後の研究によって、さらに、項目が追加せれることが、予想されるので、ここで、付加された、項目番号は、本報告書の説明のためにつけられた仮のものである。
文系の情報教育カリキュラムにおける学力項目リスト(知識理解・概念把握を除く)
B 技能習得・表現力
B-01 情報の表現法・伝達法
B-02 問題発見のための情報技術の利用
B-03 問題解決のための情報技術の利用
B-04 問題解決のためのプログラミングの作成
B-05 プレゼンテーションのための情報技術の利用
B-06 知的生産のための諸技法(ブレーンストーミング法・KJ法など)
B-07 調査のための基本技術
B-08 企画立案の技術
B-09 システム的な考え方に基づく作業の計画と管理
B-10 システム的な考え方に基づく社会の仕組みの説明
B-11 特定のハードウエアの基本操作
B-12 文書作成・DTPR技術
B-13 ファイルの保存・検索・印刷の技術
B-14 メディア編集
B-15 マルチメディア作成
B-16 データベースの設計・作成
B-17 情報検索技術
B-18 ネットワーク利用技術
B-19 その他の応用ソフトの利用技術
B-20 アンケート調査の方法・手順
B-21 統計的手法
B-22 論文・報告書の記述
C 思考力・判断力の育成
C-01 計画を立てて取り組む
C-02 情報を幅広く収集する
C-03 情報を比較・整理する
C-04 共通点をとらえる
C-05 視点を変えて考える
C-06 入力と出力から過程を推測する
C-07 言葉からその背景を推測する
C-08 利点と欠点を考えて検討する
C-09 問題を発見する
C-10 問題の解決案を出す
C-11 問題を手続きに整理してとらえる
C-12 事実調査に基づいてデータを作る
C-13 モデルを作って、試行する
C-14 経験したことから一般的な結論を出す
C-15 情報の価値を判断する
C-16 社会的な側面からの情報技術の評価
C-17 経済的な側面からの情報技術の評価
C-18 人間的な側面からの情報技術の評価
D 関心・意欲・態度・習慣の形成
D-01 判断する前に実態を正確に把握する
D-02 適切なコミュニケーションの方法を選択する
D-03 問題意識を明確にする
D-04 自由に意見を交換する
D-05 自分の意見をメディアを利用して、適切に伝える
D-06 グループを代表してグループの意見を正確に伝える
D-07 相手の立場に立ってわかりやすい表現に努める
D-08 あたえられた視点に則して意識して考えをまとめる
D-09 人権・プライバシーを大切にする
D-10 新聞・雑誌などを定期的に購読する
D-11 新しい情報関連機器を積極的に理解し、特性にあった利用方法を習得する
D-12 データに基づいて科学的に分析・解釈する態度をもつ
D-13 矛盾に対して、固執せず、モデルを再構成する
D-14 著作権やオリジナリティを尊重する
D-15 情報機器利用時の健康への配慮をする
D-16 情報の発信に対する責任を持つ
D-17 情報の真偽を客観的に評価する
D-18 自分の発信した情報の影響を、客観的に評価し、必要な改善を行う
D-19 必要な情報を自分で管理する
D-20 情報化社会に対応した日常生活の態度をみにつける
D-21 情報化社会の進展に関心をもち、社会や職業の変化を的確にとらえる
D-22 ものごとを、システム的観点でとらえる
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